営業冒険物語 第5話 営業はゲームだ その2 横山との同行

第5話 その2 横山との同行

翌週、同期の横山が大手営業研修から帰ってきて、横山の担当していたお客様への引継ぎ同行が始まった。期間は3日間。横山が運転する社有車に2人で乗って集中的に行う。

関根が新たに担当する地域は京都市西京区と亀岡市、園部町、日吉町、京北町。かなり広大だ。反面、担当するお客様は約100社。今までの上京区の半分だ。上京区の時は、新規開拓先が中心で、ユーザーは自分が入れた会社だけ担当したが、今度は長く使っていただいているユーザーも多い。100社の半分の50社がユーザーだ。おまけに官公庁も担当する。一番の大手は園部町役場、日吉町役場、京北町役場だ。

企業規模も大きくなり、新規開拓先は50社だが合計100台の他社コピー機を使っている。ユーザーは50社で自社コピー機を150台使っていただいている。他社も50台ほど使っておられる。

地域特性も全く違う。行って見ると、とにかく広い。これからは毎日社有車で移動しながら、お客様を訪問する事になる。以前のように1日に30-40社も訪問することはできない。行けて、1日10社がせいぜいだ。訪問数が稼げないから、1回の面談が重要となる。

さて、引き継ぎ同行の日、朝9時前に同期の横山の運転する社有車で出発した。

「横山、今日はどこを中心に回る?」関根は問いかけた。「今日は亀岡市の工場を中心に回るからな。亀岡市はそこそこ大きな工場があるから。できるだけ多く挨拶していこう。初めの山本チェーン京都工場まで30分位走るから、この資料を見ておいてくれ」と横山から日報の束を渡された。移動中早速関根は目を通し始める。さすが横山、しっかり書けている。山本チェーン京都工場は古くからのユーザーだが、今はコピー機の代替提案前の重要な局面だ。これからの訪問もただの挨拶ではない。競合もかなり通い込んできている。関根が上京区で行なっていたことの反対だ。上京区は攻めばかりだったので、断られて元々と気楽に提案できたが、今度はそうはいかない。

負けたら大切な自社の売上がなくなるのだ。関根は今までと違うプレッシャーを感じていた。

「横山、今までは新規開拓の攻めばかりだったけど、ユーザーはプレッシャーがかかるな」と話しかけると、「大手担当はもっときついよ。長崎先輩もこの前の大手の契約更新で、円形脱毛症になったらしいよ」

「本当か、その話」と関根は驚いて聞き返した。「あの長崎先輩ですら、そうなるのか」

そうこうしているうちに、山本チェーン京都工場に到着した。受付で手続きを済まし、2人は工場の事務棟に入った。

廊下の面談コーナーで待つと、総務の富山部長と箕輪課長がやってきた。

時候の挨拶が終わると富山部長が早速「横山さん、担当代わるんだってね。残念だね」と口を開いた。

横山から「僕も残念ですよ。商談の真っ最中ですから。でも次の担当がこちらの同期入社の関根なんで、安心しています」と紹介された。

関根は「横山同様頑張りますので宜しくお願いします」と挨拶した。

箕輪課長から「関根さん、うちはコストに厳しいから、関根さんの頑張りは、ヤマトビジネスマシンさんの社内交渉で発揮してくださいよ。これからもよろしくお願いしますね」と笑いながら返された。まあ友好的な雰囲気で、担当変更の挨拶が終わり、いよいよ商談に入った。

≪Release Date 2022/10/15≫

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