営業冒険物語 第4話 200社の新規開拓先へのアプローチの工夫 その7 社長からの電話

第4話 その7 社長からの電話

翌朝、出社するとすぐに昨日の西川紙業から電話がかかってきた。電話口に出るとなんと社長からだった。「昨日うちに来てくれたヤマトの関根さんか」。

関根は、今度は社長からのクレームかと身構え、「はいそうですが・・・」とおずおずと答えた。

「社長の西川です。昨日はすまんことしました。かんべしてやってくれな。営業部長には、私から叱っておいたから。取引先からのクレームで気が高ぶっていたようでな、ついあないなこと言ってしもうたようや」

「いや、とんでもないです。私こそ何度も訪問してご迷惑かけています」と関根が答えると、西川社長から思いもかけない言葉をいただいた。

「実は、総務課長からあんたが置いていった資料見せられてな。若いのに、なかなかやるなーと話していたんや。湿気の話なんて役にたったで」

「そうですか。お役に立てて嬉しいです。ありがとうございます」

「どうや、今日空いていたら、うちに寄っていかんか。コピー機の話も聞きたいし」

「本当ですか。もちろん伺わせていただきます。午後2時くらいでも構いませんか」

「ちょうどいいな。2時で待っているから」

関根は、この急転直下の流れが十分に把握できず、オフィスの席で少しぼうっとしていた。

町田係長がニヤニヤして近寄って来た。「関根、地道な活動の成果が見え始めて来たようだな。昨日大手チームの長崎からも聞いたよ。お客様の反応はなかなか見えてこないが、お前の活動が着実にお客様の心に響いてきだしているようだな」

関根は我に帰り、「はい、係長のおかげです」と頭を下げた。関根の心に充実感が漲って来た。

町田から「この商談を大切にクローズしていこう。準備が大切だぞ。」と言われ、関根は早速面談の準備に取り掛かった。

さて、午後2時に西川紙業を訪問すると社長と総務課長が待っていてくれた。以前だったら、面談してすぐ商品の紹介をするところだが、今の関根は違っていた。

挨拶・自己紹介が終わると「まず、そろそろコピーも切り替えかなと思っていらっしゃる背景を教えていただけますか?」と切り出した。

社長から、印刷工程の版作り前にお客様と原稿のイメージをやり取りする際は、コピーをとって持って行くのだが、その際の画質と画像の伸びが、今使っているコピー機だと不十分で困っていることを話してくれた。西川紙業の業務に耐えられるコピー機があれば、今のコピーを使って3年程だが変えてもいいと思っていると心のうちも明かしてくれた。

関根は、原稿作りを担当しているデザイナーとも面談し、作業工程とそこでの今のコピー機の問題点を詳しく聞き出した。昨日ゴキブリと呼ばれた営業部長にも会って、西川紙業のお客様の要望も確認した。渋々だったが社長からの指示らしく、色々と教えてくれた。

帰社すると、印刷工程に詳しいスペシャリストに問い合わせして、西川紙業のデザイナーからの要望を伝え、アドバイスをもらった。また、支店内の保守のエンジニアとも相談して、最適な機種を決めていった。その上で、現使用の他社機との違いと、業務改善点をまとめ、西川紙業のお客様に対する営業活動への貢献まで含め提案書にまとめていった。さらに今予想される他社の最新鋭機種との違いを、西川紙業の業務と照らし合わせて一覧表に整理した。ポイントは、保守エンジニアが早めに点検して調整すれば、ヤマトビジネスマシンのコピー機が画像の伸びを一番抑えることができるということだった。

≪Release Date 2022/09/24≫

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