営業冒険物語 第4話 200社の新規開拓先へのアプローチの工夫 その5 手帳

第4話 その5 手帳

苦闘はまだ続いた。夜明けはそう簡単には来ない。

ところで、関根は、このような活動と合わせて、この時期から手帳を活用することを始めた。こんな出来事があったからだ。

実は、この年の4月から関根のチームに新しい上司が着任した。町田二郎係長だ。着任以来、関根の行動を観察していたようで、行動計画の立て方に関して、アドバイスをしてきたのだ。

「関根、他社ダウンの活動頑張っているな。いい仕事していると思っているよ」、あまり褒められない関根は上司のこの言葉に顔が赤面した。

「大山先輩から教えていただいたおかげですよ。まだまだです」と謙遜してみたが、町田係長からは、「そうだな。なんといってもそう販売量が目標に届かないと、他社ダウンも評価されないからな」

「はー、確かにその通りです」関根は町田も叱咤激励型の精神論で来るかなと、身構えた。しかし、町田のこの後の話は意外なものだった。

「実は、お前の日報を1ヶ月分、じっくり見てみたんだ。新規開拓のアプローチで新たな取り組みをしているな。まだ苦戦しているが、いい活動しているから、これは続けろよ。こういうことは遅効性なんだ。忘れた頃に成果が出てくるもんだからな」

「ありがとうございます。頑張って続けます」関根はホッとした。実は他のチームの先輩から、資料作りしている時に、「そんな余分なことしている暇があったら、外に出て、飛び込んでこい。新規開拓は、とにかく行動量だ」と注意されたことがあったからだ。

少なくとも直属の上司が認めてくれていることに、安心感を覚えたのだ。

町田の話は続く。「別のことも気づいたぞ。お前の訪問パターンはバラバラで、行きあたりばったりが多いみたいだが、どうだ?」

「はー、新規開拓のアプローチですので、前日に翌日回る地域を決めているんです。商談に入ったところは別で管理していますが・・・」

「やっぱりな。新規のお客様でも、定期的にくる営業マンのことは覚えているもんだぞ。関根、訪問のスケジュール管理をしっかりやってみないか。今行っているアプローチが活きてくるぞ」

「はい、やってみます」関根はその気になった。

「じゃ、まずは手帳に来週1週間分の新規訪問先のスケジュールを入れるんだ。それからこの訪問計画表に残りの3週間分の見込み客への訪問予定を入れてみろ」とA4の表を渡された。月間訪問予定&実績表だった。

「えー、1ヶ月分の予定を決めろということですか!」関根は驚いて言い放った。

「そーだよ。何か不思議か?」

「そんなの無理ですよ。新規開拓ですよ。どう転ぶかわからないじゃないですか。1ヶ月分の予定立てる意味なんてないんじゃないですか」

「まあそう言わず、これ見てみろよ」町田は、訪問計画表を出してきた。何とそれには、この1ヶ月の関根の主要な訪問先の活動結果が入っていた。先程、バラバラな訪問パターンと言ったのは、このことだったのだ。

町田はこの表を見せながら、説明し出した。

「例えば、この山崎産業だけど、月初に行ったきり、そのままだろう。これだと、お客様の印象に残らないんだ。関根は、荷動きの時に、お客様から『ヤマトさんも検討するよ』と声をかけてもらいたいんだろう」

「はい、そうです」関根は力を込めて言った。

「お前のお役立ちの取り組みはとてもいいけど、あれだけじゃお客様の心に残る比率が十分じゃないんだ。まだ荷動きの時に声をかけてくれるところまで届いていないんだ。成果が見えないことが続くと、そのうち疲れてくるぞ」

そのうち疲れてくるぞとの町田の言葉は、関根の心に刺さった。既に疲れ始めていたのだから。

「だから、お役立ちアプローチの予定を立てて定期的にやってみたらどうだ。これだとぐっと印象に残るぞ」この町田の言葉に関根の気持ちはすっと腹落ちした。

「わかりました。まずはやってみます」

≪Release Date 2022/09/10≫

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